夕立ロックンロール

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「頼む。もう仕事に来ないでくれ!」  バイト先のコンビニにて、俺は店長からクビを懇願されてしまった。 「君が来ると売り上げが半分に下がるんだ。発注も狂うし、これじゃあ商売にならない」 「そうですか……」 「君はお店で働くのは向いてないのかもしれない」  お世話になりました、と頭を下げ俺は元職場を去る。  はぁ、今回も続かなかった。  今まで数ある職場を働いてきたが、どこも長く続いたことはない。  長くて四ヶ月。最短は一週間。  致命的なミスをしたことはない。  自分で言うのもなんだが、性格も謙虚で穏やか、職場の人間関係もうまくやっていた。  なのに俺はいつもバイトをクビにされる。 「あ、雨……」  コンビニを出てすぐのところでポツリと一滴の雫が頬を打った。  やがて落ちる雫は数を増し、あっという間にコンクリートを濡らす程の量になる。 「また夕立だ……」  今日雨が降るなんてことは天気予報でも全く報じられなかった。  道行く人々は突然の雨に「うわぁ」だの「聞いてないよ」などと悲鳴をあげ頭を覆う。  悲鳴をよそに、俺は当然のようにリュックサックから折り畳み傘を取り出し、傘を広げた。 「ほんと、ここまでくると呪いだよな」  平井慎(ひらいしん)。二十六歳。職業フリーター。彼女なし。  特技・雨を降らすこと。  特技というか特殊体質に近い。  俺が目的地に着くと、必ず雨が降る。  天気予報で雨という言葉が一文字も出てこない時も、俺が行く先で雨が降る。  俺が現れると突然の雨があまりに起こるので、友人からは『ミスター雨男』と称された。  俺が行く先々は雨で湿る。  これまで、ペンキ屋の塗装、窓の清掃、農作物の収穫、コンサートスタッフ、その他諸々と様々な仕事をしてきたが、どれも俺の雨男体質のせいでクビにされた。  この体質を踏まえ、天気に左右されないコンビニを選んだつもりだったが、やはりクビにされてしまった。 「天気とまったく関係ない仕事ってないかなぁ」  それとも、この体質が生かされる仕事とか。 「あるわけないよな」  ため息を吐いたその時、  雷鳴が轟いた。  辺りが眩しい光で包まれる。  あまりの衝撃に持っていた傘を離してしまった。 「ビックリした……」  すごい音だった。光ったし。  この辺に落ちたんじゃないか?  落ちた傘を拾おうとすると、ガシッと手を掴まれた。  その手は力強く、自分より一回り大きい。それに手が赤かった。 「赤い……?」  視線を掴んだ手から人物へスライドさせる。  そこには真っ赤な鬼がいた。 「ついに見つけた! 俺たちのメンバーになる逸材をッ!!」
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