昼下がりの公園

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昼下がりの公園

 通院を終えた帰り道、僕は近所の公園に立ち寄った。普段は素通りするだけの公園だったけれど、心地の良い天気と柔らかな風にさそわれて、僕はベンチに腰掛けた。  腰掛けてすぐに、僕はスケジュール帳とペンを取り出した。そうして予定表の「通院」と書いた項目にチェックを入れる。  もう一年以上、鬱の治療の為に病院に通っている。悪くなっている気はしないが、良くなっている気もしない。どんな時も人当たりの良い笑顔を作れるし、仕事も普通にこなせるし、楽しいと思える事もそれなりにある。でも、もう何年も心は満たされないままだ。  子供の頃から感じていた違和感は大人になるにつれて生きづらさに変わり、僕の大事なもののほとんどを奪ってしまったのだ。  違和感を抱えながらも周りに合わせていくうち、僕が最初に失ったのは自由な時間だった。  人と関わるのが苦手な僕は、仕事を一生懸命こなすことで認めてもらおうと努力をしていた。どんなに夜遅くまで仕事をしても、嫌いな上司から心無いことを言われても、努力して結果さえ出すことができれば認めてもらえると信じていたし、居場所ができると思っていた。  でも、自由な時間と引き換えに手に入れたのは、仕事量に合わない少しの残業手当と、慢性的な疲労感だった。
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