第2話 夢のはなし

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課のメンバーからは『やっとか。結婚する前に清本のがさつさがバレなくてよかったな』とか『おじいさんとおばあさんになってから、結婚するのかと思っていましたよ』とからかわれてしまった。 「はい。斗翔……森崎さんと田舎の方で暮らすつもりです」 「社長がいいと言うかなぁ」 心配されるのもわかる。 斗翔は今や売れっ子の建築デザイナーで森崎社長は限界まで依頼を受けるから。 「会社にこなくてもできる仕事は極力、田舎でこなしたいって彼の希望なんです」 「そうか。森崎君は人嫌いだもんなぁ」 「人嫌いというか、少し人見知りなだけです」 本当は誰よりも人のぬくもりを欲しい人なのだ。 「清本さんが森崎君と話すようになってからは彼もよく話すようになったよ。私はずっと彼が入社した時から心配していた人間の一人だからね」 知っている。 斗翔が筒井課長に昼ご飯をよくもらったと言っていたから。 筒井課長は奥様にお願いして多めにお弁当を作ってもらい昼ご飯も食べずに仕事をする斗翔にお弁当をわけてあげていたとか。
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