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もちろん、斗翔の容姿からいって女子社員にモテていたらしいけど、あのとおりの人見知りで誰とも口を利かずにいると自然、向こうから距離を置かれたそうだ。
そんな中、筒井課長だけは見捨てずにいてくれたのだから、斗翔にすればエサを運んでくれる親鳥同然。
「課長は捨て犬や猫に弱いですからね」
「可哀想だろ!?つぶらな瞳でじっと見られたら連れて帰るに決まっている!」
筒井課長は自分のデスクから、犬や猫のフォトアルバムを取り出して見せた。
辛い時、見ると癒されるらしい。
筒井課長が斗翔にお弁当を渡していた時の光景は懐かない野良猫と猫好きのおじさんのようだったと後に先輩から聞いた。
二人のほのぼのぶりが目に浮かぶ。
「今は清本さんが森崎君のお弁当を作ってくれているからいいが、私の妻なんかはいまだに『あの子はちゃんとご飯を食べているか』と心配しているんだよ」
「課長の奥様の煮物がとても美味しかったっていまだに言ってますよ」
「ははは。それはよかった。あの頃は娘はまだ高校生でお弁当を食べていたから、妻もついでで作っていてくれたけれど、今では自分一人だろう?冷凍食品が増えたよ……」
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