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「俺のこと知ってるのか」
野良猫が警戒するように斗翔は身構え、表情をこわばらせた。
「森崎の顔にされた新しい社長だろう?戦略は悪くない。立て直すためなら、それが最善と言ってもいい」
「伶弥さん。詳しいですね」
納多さんが朝日奈建設の社員のようだったから、業界の話を知っているのも納得だけど。
伶弥さんが斗翔を知ってるということは納多さんも知っているのだろう。
「ここにいたことを隠して欲しいなら、隠してあげてもいい。ただし、今回だけ」
「隠せるんですか!?」
「今、島では二本目の橋を架ける話が出ている。その橋の建設をどこの建設会社にするか話し合い中だ。その話し合いにきていたということにしてあげてもいい」
「よかった。お願いします」
「よくない」
斗翔は私に会いに来たことを隠す気はないようだった。
目を逸らし、斗翔は辛そうな顔をしていたけれど、それを見た伶弥さんが笑った。
「斗翔君。君はもっと狡猾にならないとね。そんな馬鹿正直に自分の感情を見せてるようじゃ経営者には向かない」
「自分を騙る?嘘をつけって?」
「敵に足元をすくわれたくないならね」
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