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経営者になろうとは思わない。
社長で居続けるつもりもない。
けれど、森崎建設で働く人達をこのまま見捨てるわけにもいかないのは事実だ。
憎まれても逃げて二人で幸せになることができるのならば、こんなにも苦しまずにすんだかもしれないと考えることもあった。
森崎社長に利用され続けてきた自分が森崎建設の社長になるとは思いもよらなかった。
こんなのは笑い話だ。
俺が社長になったのを知った時に言われたのは
『お前が社長の椅子を狙っていたことは気づいていた』
気づいていた?
まったく見当違いもいいとこだ。
けど、今はこの立場と名前だけが俺が使える武器ならば、最大限に利用するしかない。
このまま何もせずに戻れば、優奈子は間違いなく今まで以上に俺から自由を奪おうとするだろう。
SP達もプロだ。
三度目はない。
まずは俺のそばから離れてもらわないことには仕事もままならない状況だった。
大元に掛け合うしか手はない。
雇い主。それは―――
「柴江頭取にお願いするか」
優奈子の父親はわかりやすい人間だった。
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