第27話 弱み【斗翔】

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目に見える数字に利益、それを重視し、自分以外の他人がどうであろうと関係ない。 すべてはどれだけ自分にとって有益なものであるか。 それだけだった。 共和(きょうわ)銀行に立ち寄ると優奈子の父親は自慢げに俺を行員(こういん)達に紹介した。 娘の婚約者としてではなく、『建築デザイナーの森崎(もりさき)斗翔(とわ)』として。 「頭取、森崎斗翔さんとお知り合いなんですね」 「先日、発表された新しい駅のデザイン、素敵でした」 「今後はどんなものを手がけていくんですか?」 何人かに話しけられて、笑顔でかわし、頭取と来客用の部屋に入る。 来客用の部屋には革のソファーが置かれ、金縁の絵画が飾ってあった。 「娘がなにかしたのかね」 さっきまで堂々としていた頭取が表情を曇らせていた。 これはなにかあるなと察しのいい人間なら誰でもわかる。 軽く探りをいれてみた。 「実は優奈子さんが職場に押しかけてきて困っています」 「優奈子が……」 「先日は仕上がった図面にコーヒーを投げつけられました」 「なんだと!」 頭取は顔を険しくさせた。
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