第3話 暗転

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後輩は小さい声で『すみませーん』と言ったけど、反省は一瞬ですぐに『どんな家に住むんですか?』と小声で聞かれた。 「海が見える家よ」 まだ午前の業務中、大きな声で話すのはできない――― 「うわー!いいですねぇ。確かに森崎さんなら、すっごく素敵な家を建てそう!」 「静かに!」 案の定、筒井課長から叱られた。 ほらね……。 うらやましーい!と後輩が溜息を吐いた。 「結婚したら、清本先輩は奥様ですね」 「奥様になんてなれないわよ。新しい仕事を探すつもりよ」 「なればいいのにー!森崎さん、カッコイイ上に高収入、才能まであって将来有望ですもん。文句なしじゃないですか」 奥様なんてガラじゃない。 今までの仕事はできなくなるかもしれないけど、また何か仕事を見つけて―――そう思っていると廊下が騒がしい。 「おいおい、なんだ」 筒井課長が立ち上がり、ドアを開けた。 「大変だ!!今、テレビの会見で―――!」 「森崎社長が主導して建築データの改竄をしていたらしい!」 社内の電話が激しい雨音のように一斉に鳴り響いた。
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