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ゼリーみたいなものなら、なんとか食べれていたけど。
自分なりに必死でしがみついていたんだと思う。
けれど、状況は変わらず、結局私は逃げてきた。
斗翔を置いて―――ううん、斗翔が私を手放した。
倒れる前に私だけを逃がしたの?
でもそれは別れでしかなくて。
「……斗翔」
温かいお弁当を抱えたまま、一人泣いた。
もう涙なんて枯れたはずなのに。
私のために作ってくれたお弁当のぬくもりが嬉しかったのもある。
向こうでは誰も私のことを考えてくれる人はいなかったから。
だから余計に涙がこぼれたのだ。
きっと―――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
泣きすぎて頭痛い。
ズキズキする。
―――泣くんじゃなかった。
朝になって後悔した。
目蓋が腫れて重い。
なにこれ、ひどい顔。
古い鏡に映った自分の顔だけど、ホラーすぎる。
「ま、まあ、誰にも会わないからセーフよ!セーフ!!」
あー、田舎に来てよかったと強がりにもほどがあることを口に出して言って、昨日の残りのお弁当を食べた。
民宿『海風』の人達には感謝よ、感謝。
久しぶりにご飯が美味しいって思えた。
それに―――
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