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『バケツのかわりにこれでいいか』とは思えなかった。
これは掃除用具ではない。
祖母が草木染めで使っていたタライだった。
「……おばあちゃんが私にツッコミいれたってことでいい?」
かなり手荒だったけどね。
元気を出せってことかな。
なるべく、他の方法で頼みたいところだったわ……
結局、掃除用バケツは土間に置いてあるのを発見し、それを使った。
家の中の拭き掃除が終わったら、布団と座布団を干して、食料も買いに行かないと。
仕事はたくさんある。
祖母が亡くなってから、誰も家の手入れをしてなかったせいで庭は雑草だらけだし。
庭に降りて、草を見ているとヨモギが大量に繁殖していた。
それを手に取る。
「ヨモギは春と夏じゃ色が違うのよね」
祖母と一緒に染めたことがあるのを思い出していた。
春のヨモギは黄緑色、夏のヨモギは緑色に染まる。
草木染めは不思議でその時、その時で色が変わる。
すべて自然任せだよと祖母は笑っていたのを思い出す。
「タライ……」
それはちょっとした出来心だった。
天気は上々、空は快晴。
初夏の空気は私を少しだけ前向きにして、ヨモギを無心で摘み始めた。
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