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器具も材料も揃っている。
祖母の工房は家のすぐ隣にあって、昔は納屋として使っていた建物だった。
まだ誰も片付けに来ていなかったから、祖母が使っていたものすべてが残っていた。
白い麻のストールを何枚も取り出して洗って干した。
布は一度洗って乾かしたものを使う。
摘んだヨモギは綺麗に洗って、鍋に入れ水を加えて煮る。
「草の匂いがする」
白い湯気が頬にかかる。
エアコンをつけるのも忘れ、深い緑へ変わる水を眺めていた。
「そろそろいいかな」
パチンと火を止めてザルにあげる。
使うのはこの黒っぽい緑の液。
ヨモギを絞ってできた液に白い麻地のストールを端からゆっくりとつける。
まだ緑にはならない。
ここから漬けてこみ、それから火にかける。
その作業を繰り返す。
あとは布の色落ちを防ぐために媒染剤を選ぶ。
アルミ、ミョウバン、銅、鉄、石灰などがあるけど、このどれを選ぶかでも色が違う。
ぽたりと汗が落ちた。
「暑い……」
窓を開けて外を見ると紫陽花が見える。
それからブルーベリーの木に実がなっているのも。
おばあちゃんの庭には染色のための草木が多く残っていた。
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