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タデアイ、赤麻、ドクダミ、ツワブキ、カラスノエンドウ、雑草なんてないのだ。
この家には。
外に飛び出すとひたすら摘んだ。
まるで何かにとりつかれたみたいに。
少なくとも今は悲しみを忘れていた。
あのどうしようもない喪失感さえ消えていた―――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
染め終わったのはお昼をだいぶ過ぎた頃だった。
庭にランドリーロープを張り巡らし、井戸水で洗った布を絞る。
そして、色とりどりに染まった麻のストールをロープにかけていった。
周囲の木々がちょうどいい影をつくり、陰干しができるようになっている。
これもきっとおばあちゃんが考えたんだろうな―――染めるための環境にこだわっていたおばあちゃん。
おばあちゃんの娘である母は変わった人だと言って、あまり寄り付かなかったけれど、私は長期の休みには決まってこの家に預けられていた。
両親が二人とも仕事の忙しい人だったから、マンションに長い時間、私一人置いておきたくなかったのだろう。
はためく麻のストールをぼんやり眺めた。
色に囲まれて、その中心で空を仰ぐ。
空色の青。
青は斗翔の色。
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