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別れた彼と同棲していたこともあり、電化製品も家具もない。
染物作家だった祖母が生前住んでいた家だったため家具は揃っている。
山の中ってことを除けば、暮らすにはなんの問題ない。
暮らすにはね……
精神的には大ダメージを受けてるけど。
ぼふっと座布団に顔を埋めた。
そう。
いわば、私は戦に負けた武将が逃れてきた落武者と同じ!
「住むには問題ないけど、手入れしないといろいろと無理ね」
座布団はカビくさいし、部屋は掃除してないからほこりっぽい。
しかも、庭の草は生い茂り、もさもさしてる。
「掃除かぁ……」
掃除する気にもなれない。
今は。
だらだらと縁側に猫のように転がった。
とりあえず、寝ておこう。
そうしよう。
そう思った時―――
「お姉ちゃん、死体なの?」
なんだこのガキ……じゃない、お子様は。
むくっと顔だけあげるとゴールデンレトリバーが目の前に『こんにちは』していた。
「え!?なに?犬?可愛いけど!?」
ドコォッと犬の鼻先でどつかれた。
かなり力強く、いたっ、いたたっと言いながらら、犬から逃げるため寝転がっていた体を起こすとやめてくれた。
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