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「いえ、平気ですか?」
「あんまり」
「そうみたいですね」
納多さんはサッと名刺を出した。
怪しい者ではないと言いたいのだろうけど。
差し出すのはそのお弁当にしてほしい。
「ごめんなさい。貧血みたいで」
「何も食べてなかったんですか?」
「水も飲んでなくて」
「は?何してるんですか」
慌てて納多さんは紙袋からお茶のペットボトルを取り出し、あけてくれた。
「こんな暑いのに水も飲まなかったら、倒れますよ」
「そうですね。ぶっ倒れるかと思いました」
納多さんは手際よく縁側に座った私の横にお弁当箱を開け、どうぞと割り箸までわってくれた。
「面倒見いいですね」
「……まあ、面倒を見る仕事をしているので」
現場監督だから?
そう思いながら、名刺を見ると建設大手の朝日奈と書いてあった。
「はー。大きなとこで働いてますね」
鮭の入ったおにぎりを食べた。
しょっぱい鮭が白いご飯によく合う。
お米も美味しい。
「まあ、そうですね。朝日奈建設は業界トップですから」
―――知ってる。
森崎建設が業績を落とし、トップに返り咲いたのが朝日奈建設だった。
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