第5話 無心

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社長が代わったこともあり、今一番、建設業界で注目されている建設会社なのよね。 私にはもう関係ないけど。 名刺を横に置いて、納多さんに言った。 「納多さん。民宿で働く人達に似合いそうなストールを持って行ってくれませんか?いろいろとお世話になってしまってるのでお礼に」 はためくストールを指さすと納多さんは驚いていた。 「これは商品ではないんですか?」 「違いますよ。私はただの素人だし。染物作家だったおばあちゃんが見たら、きっと笑います」 「そうですか?とても綺麗だと思いました」 真面目な顔で納多さんは言った。 綺麗かな。 色を眺める。 まだまだだと私は思うけれど―――自分が納得できるまでのところまでいけたらどんな色になるのだろう。 「お礼になりそうなら、それで」 「なるとは思いますが」 「思いますが?」
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