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賢者、王都に旅立つ。 : 12
そうして同行者が増えてしまった私たちは一晩森の中で野営した後、相変わらず小型ウルフたちの群れを探しつつ王都の方角へと森を進んだ。
「ちょっと聞きたいんだけど、いいかな?ウル」
《はい、何でしょうか?パトご主人》
「答えにくいかもしれないけど……ウルの群れはどこにいるのかな?」
どういう理屈か初めはたどたどしい念話をしていたウルは、一晩経つと立派に会話が成り立つほどに精神が成長していた。
それは言葉遣いだけでなく思考力もそのようで、獣そのものだった『食べる!寝る!排泄する!』という単純な言葉や行動が、わざわざ近くを離れる許可を得たいと訴えてきたり、少し離れても戻っ来ると謝罪をするというふうに変わるのを見て、私とミウはお互いに顔を合わせる。
「……これはやはり『テイムした人間に影響を受ける』っていう証拠になる……のかな……?」
「そうだとしても……魔術協会にもテイム能力のある者もいるって聞いてますけど……父も母も『魔物や魔獣って賢い!』なんて言ったことないですよ……?」
その会話はそれとして、今ウルは首を項垂れて少し考えていたが、ようやく口を開く──ではなく、念話を発してきた。
《それが……どこにいるのか、わからないんです》
「わからない?」
《はい。ウルはリーダーである父と母に独立するようにと噛みつかれて、群れから少し離れていたんです。独立するにはまだウルは弱かったから》
「そうか……でも、すごく痩せていたじゃないか?」
《はい。ウルは日を数えることができませんでしたが、群れがまだいる時にウルがひとりで寝る前……アキ?アキというのですか?葉っぱが枯れて全部木から落ちて、木の実がたくさん。ウルが目を覚ましたら、木の実はなくて葉っぱがまた木にくっついてました》
「……ということは、ひょっとしたらほぼ半年近く眠り込んでいた……?それではさすがに魔獣でも腹ペコになるよね……」
「うっ……ウルゥ~~!!まだお腹空いてないっ?!私のおやつもあげるよ?!何が食べたいっ?!」
まだガリガリ状態のウルに抱きつき、ミウがどこに隠していたのかおやつまでマジックバッグから取り出してみせる。
《あ…いえ、そ、それはミウ様のご飯……た、食べたいですけど……食べちゃったら、ミウ様がお腹ペコペコに……》
ダラダラと涎を垂らして、主に肉類を見つめながらも健気にウルは『自主的待て』を言い出した。
さすがにそんなにたくさん食べさせてお腹を壊してしまうのも本末転倒と思うから、とりあえず私の分から加工したミンチ肉を一食分出してことを収めよう。
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