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賢者、転生する。 : 4
その次もさっさと私の人生は終わってしまった。
何せ賢者になるための学費を稼ごうと10人ほどの冒険者パーティーに荷物持ちとして参加したところ、まさかの強盗パーティーだったのだが運の尽き。
成人したばかりの13歳の少年は世間知らずと侮られて当たり前だったが、参加時に『仕事内容を口外しない契約』をうやむやのうちに結ばされ、解除してもらうのに半年ほどの労働が必要だと言いくるめられてしまった。
当時は純粋で素直だった私は、世界中のどこにでも行ける権利のある『冒険者』になれたことに浮かれ過ぎていたのは否めない。
まさかその人生で初めて参加したパーティーの連中が人非人の団体で、ダンジョンで実力が伴わなかった憐れな同業者たちから遺物となってしまったギルド証明書や討伐証明部位、魔石などを奪って換金するなどは当たり前。
ランクが低い新人たちやダンジョンで疲れ切ったパーティーを襲撃したり、街道を行く商団や旅行者の荷馬車を強奪するなどの非道を繰り返し、ついに『ハイエナ』という不名誉なあだ名をつけられた頃、ようやく胸の悪い半年間が過ぎた。
嗤いながら奪った物を山分けするパーティーのリーダーに話しかけた私は、今日こそ契約を解除してもらってパーティーを抜けようとした。
「……仕方ねぇなぁ。まぁ、荷物を持っていくのは面倒だろう?置いてけよ!」
「は?」
くるりと向きを変えられた私は少し離れた木陰に立つ男に見覚えがあると思って動けなくなった瞬間に、背中から斬りつけられた。
「な……んで……ま……」
魔王、お前がなぜここにいる?──そう私は言いたかったのに、私を斬った男は違う解釈をした。
「『何で?』『待って?』…待つわけないだろうが!間抜け!せっかく可愛い顔してるから、もう少ししたら薬漬けにして、いい感じに貴族の奥様方に売りつけようと思ってたのによぉ……儲け損ねたぜ、まったく。おい、お前ら!こいつを身ぐるみ剥いだら、好きにしていいぜ!」
ザクッ!
ザクッ!
ザクッ!
何度も背中から剣を突き立てられ、私は熱いという感覚から急速に体が冷えるのを感じ、スゥ…と魂が動けなくなった身体を抜けて消えていくのを自覚した。
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