相合傘

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「榊さん、傘を忘れた?」 「大家君…。」 「大丈夫?」 大家君は女の子に間違えらる位、可愛い顔をしているのに学年一の秀才。 そのくせ、どこか人を寄せ付けないオーラを纏っている。 「そこのカフェで雨宿りしない? 夕立だからすぐにやむだろうけど。」 「えっ。でも…。」 「泣いてるでしょ? カフェオレでも飲んで、落ち着いた方がいい。」 「あっ!」 泣いてるって、バレたんだ。 恥ずかしい。 泣いてる姿なんて、誰にも見られたくなかったのに。 私が俯くと大家君が、 「あんな奴の為に流す涙がもったいない。 泣いてる榊さんもいいけど、笑ってる方が可愛いよ。 今すぐに立ち直るのは無理だろうけど、僕が話しを聞くから。」 そう言って、大家君が微笑んだ。 私の涙が吹っ飛ぶくらい、大家君の微笑みは破壊力抜群だった。 「大家君、ありがとう。」 「さあ、行こう。 ほら、ちゃんと傘に入らないと濡れるから、もっと僕に近づいて。」 「う、うん。」 ショックを受けたはずなのに、夕立が止む頃には吹っ切れていた。 立ち直りの早い自分にびっくりする。 カフェでは時間を忘れて、2人で話しをしたり勉強も教えてもらった。 翔の事を忘れた訳じゃないけれど、ショックが薄れてきていた。
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