相合傘

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私、(さかき)美穂は学校帰りに、参考書を買いに本屋へ寄っていた。 彼氏の(しょう)は用事があるって言って、顔を合わせる間もなく急いで帰ってしまった。 ここ1か月程バイトが忙しいみたいで、全然デートをしてないし、携帯も既読スルー。 彼氏の翔とは高校に入学して暫くしてから、告白をされて付き合い始めた。 翔はクラスメイトで決してかっこいい訳ではないが明るく優しい性格で、そんな翔からの告白は嬉しかった。 本屋を出てふと空を見上げて、怪しい雲行きにため息をつく。 「雨が降ってきそう。早く帰ろう。」 1人で呟くと見知った背中があった。 翔がいた。 駆け出して声を掛けようすると、ピタリと足が止まった。 翔の隣には見知らぬ可愛い女の子。 その上、手を繋いで…。 最近、忙しかったのはあの子とデートをしてたから? 浮気? 浮気なら私に見つからない場所で、デートをするはず。 本気なんだ。 私に飽きたんだ。 使い古した玩具みたいに。 怒りよりも悲しみが襲ってきた。 立ち尽くしていると、雨が降ってきた。 雨足が強くなるのに、時間はかからなかった。 雨に紛れて涙が溢れて止まらない。 何が悪かったのかな。 傘をささずに呆然と立ち尽くしていると、誰かが傘に入れてくれた。 振り向くと怪訝そうな顔をしたクラスメイトの大家(おおや)君がいた。
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