魔の一週間

12/12
125人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
「欠片もねぇ」 探し始めて何時間経ったのだろう。 この広すぎる学園を片っ端から探したとしても書類1枚足りとも見つからない現状に、俺は疲弊しきっていた。 諦めるべきなのか。 しかし、諦めたら男が廃る。 でも見つからないのにこんな無意味なことをやり続けても……… なんて、悶々と考えていると、 何だか考えることすら放棄したくなってしまい、 俺はその場に座り込んでしまった。 「はぁ……マジで退学になんのかな。」 性にあわないというか、場違いというか、 日本語は難しくてよく分からないけれど 兎にも角にも普通に生活していたら、まず関わることも知ることもなかった世界。 勢いで決まったとはいえ、それなりに不安だった。 でも入ってみればほんの数週間だが、楽しいと思えることもあった。 飛んで火に入る夏の虫って、こんな時に使うのかな。 違うかも! なんて、アホなことばっかり考えてみても、何か変わるわけじゃない 「中卒で働くか…」 お先真っ暗だ。 いい方向に変わる気がしない。 いっそ、『すいません!なくしました!』っていうべきか。 そんな言い訳みたいなこと、したくないな。 「だめだーーー!もうわからん。」 俺はバタッと後ろに倒れて、空を見上げる。 憎たらしいほどの快晴。 なんだよちくしょう。雨降っちゃえ。ザーザー降りになってみんな濡れて帰っちゃえ。 びしょ濡れで風邪ひいて、看病中の恋人にキッッス、されて、移って、大変なことになっちゃえばーか。 「そもそも!!!! 何もしてないのに何が品格に合わないとか見た目云々でやめさせられなきゃいけねーんだどあほーーー。」 どあほー…どあほー… オー、ヤマビコ。 「キミ…………何、してるノ………」 「ドワッ!?!?!?!」 突然太陽の光が消えたかと思うと、知らない人がそこにいた。 ビックリ。変な声出ちゃったよ。 「ひとりで…………ブツブツ、言ってル。 …………………変人、なの?」 てか声ちっっっっっちゃ!!!! 耳と目がいいことだけが自慢の俺だから聞き取れるけれど、普通の人間じゃ聞こえないのでは。 と思うほどにちっこい声で男は話す。 そして、 「なんで、花、持ってん、スカ」 なぜかお花を持っている 「これ、植える………ために、持ってる。」 「ああ、なほ……」 変な人だ!!!!!! 「何、してるノ」 「えっ」 「今、授業中、デショ…………… ……………………サボり?」 こてん、と首を傾げた。 暗い紫で、フワフワの少し長い髪の毛。そして印象的な口元のほくろ。 良くは見えないけれど、恐らく整った顔をしているであろう男は、 何故か俺の隣に座り、そう言った。 「サボり…ス。」 あながち間違いでは無い。 授業を受けることを放棄してしまってるし。 「フーン……… なにか、悩んで、いるから、サボってる…?」 「ちがう、スよ」 「なんで、サボり、してるノ…? いやなこと、ある?」 しつこいな。関係ないだろ。 そう言ってしまいたくなる。 「オレ、話………きく、教えて」 「……………」 「だって、ずっと、…… なにか、探してた。」 「あ、」 そっか。なるほどな。 俺が慌ただしく学園を駆け回って探しているところを、見てたんだ。 そりゃなにしてんだって、なるよな。 「ただの自己責任、ッス。」 自分で蒔いた種っていうか。 大切な書類を放置せずに手元にちゃんと置いておけばよかっただけの話だ。 それ以上も、それ以下もない。 「そ、か。」 男はそれだけいうと、何故か俺の頭をポンポン、と優しく撫でる
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!