1.実らなかった初恋

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明里のバイト先は駅前にあるカフェレストランだ。 大学生になると高校生の時に憧れていた場所でバイトを始めた。夜はイタリア料理を出す店で、昼間はパンケーキや軽食なども扱っている。結局サークルはあまり興味を引かれるものがなくてはいらなかった。それでも大学で勉強して友達と遊んで、バイトをして。貯まったお金で友達と旅行に行く。 そんな普通の大学生活を送っていた。 「おはようございまーす」 「おはよう。あれ、明里ちゃん今日ランチから? 学校はお休み?」 「はい。ランチからラストまでです」 バイト先『ミネット』の裏口から入ってスタッフルームに行くと一人の男性スタッフがいた。 「辰巳(たつみ)先輩、今日シフト入ってましたっけ?」 辰巳は明里がミネットでバイトを始めた時にすでに働いていた先輩だ。明里の一つ年上で、大学四年生。就職も決まった辰巳は卒論のためにバイトの日数もかなり減らしていたはずだ。 「小長谷(こながや)さんが熱出して休みになったから、店長に急遽呼ばれたんだ」 「え、卒論大丈夫ですか?」 「一応ね」
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