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苦笑いしながら辰巳は黒い前掛けエプロンを着けた。すらりとした長身の辰巳が着けると様になる。実際に辰巳目当でミネットに通ってくる人もいるらしく、明里も素敵な人だなとは思っていた。
「それより明里ちゃんはどう? やりたい仕事の方向性とか決まった?」
「大学のガイダンスの案内も見るんですけど、いまいちピンと来ないんですよね~」
就職活動を終えたばかりの辰巳には聞きたいこともたくさんある。何より、大手の通信会社に就職が決まった辰巳ならなおさらだ。でも明里には将来のビジョンがなくて、「何がやりたいのか」という質問には言葉を濁してしまう。
「そうか。確かに明確な志望動機ってなかなかないよな。俺も説明会は百社以上行ったなぁ。やっぱり色々足を運んでみないとわからないこともあるし」
「そうですよね~。そもそも卒業したら働くって、それでいいのかなと思ったり」
「それは……働きたくないってこと?」
「まぁそれもありますけど……。でも他にいろんなことしてみてから働きたいっていうか」
「それについては同意だな」
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