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高校を、大学を卒業したらすぐ働かなきゃいけないなんて誰が決めたのだろう。学生のころは時間があってもお金はないし、社会人になったらお金はあっても時間はないと言う。自分の人生がこのままでいいのかと思うと、働くという選択が必ずしも良いものではないような気がしてきた。
「まだ時間はあるんだからいろんな業種見てみた方がいいと思うよ。きっと明里ちゃんも興味持つ業界もあるだろうから」
「先輩の言葉、すっごく身にしみます……」
「はは、大したこと何も言えないけどね。何かあれば相談して」
「もちろんです! お願いします!」
長身に似合わず屈託ない笑顔を向けてくる辰巳を見て明里も微笑むのだった。
「そういえば、今月で退職される山田さんの送別品なんだけどどうしようか?」
「あ、そっか。そうですよね……」
明里は前掛けのエプロンを着けながらうーんとうなった。山田さんとは朝から昼過ぎまで入ってくれるパートの人だった。結婚して時間があるからと働いていたのだが、このたび子供を授かったこともあって、おなかが大きくなる前に退職することになったのだ。特にカフェなどのホール仕事は何かあってからでは遅い。
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