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そう言ってにこりと微笑まれると明里はうっと言葉に詰まってしまった。
この間というのは辰巳とシフトがかぶった日のことだ。
ラストまでのシフトが二人だけで、店を閉めて家の近くまで送ってもらったことがあった。そのときに明里は辰巳から告白されていたのだ。そのとき返事はできなかった。告白されたとき、正直嬉しいと思った。
けれど、やはり明里の中には灯とのことがまだ胸の中でくすぶっていた。辰巳と付き合ったらきっと優しくしてくれるし、大事にしてくれることはわかっているのに、うなずくことも断ることもできずにずっと保留のままだったのだ。
「考えて……おきます」
「うん」
めがねの奥で優しく微笑む辰巳から視線をそらしてしまう。今朝、灯と会ってしまったこともあり、明里はぎこちない一日を過ごしたのだった。
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