1.実らなかった初恋

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休みの日だと混んでいてゆっくり見て回れないだろうということで平日の夕方から待ち合わせることになった。 「お待たせしました」  ベージュのAラインワンピースにカーディガンを羽織って待ち合わせ場所にやってきた。セーターの腕をまくって斜めがけのバッグを背負っている辰巳の姿は様になる。ちゃんとした目的があるのにまるで恋人同士の待ち合わせみたいだなと思いながら辰巳の元に駆よった。 「おはよう、明里ちゃん。そのワンピース可愛いね」 「あ、ありがとうございます……」 会ってそうそう服装を褒められて明里は思わず照れてしまう。友達同士で褒め合うのとは違うそれに、少しだけ胸がそわそわした。 「それじゃ行こうか。えっと、お店は……」 「あ、任せてください! 事前に山田さんに聞いてきましたから」 「ありがとう。それじゃあ、はい」 そう言われて目の前に手を出された。まるで本物のデートのように思えてその手を取ろうか迷ったそのとき。 「明里……?」 「えっ?」 名前を呼ばれて思わず振り返った。 「灯……?」 そこにいたのは目を大きく見開いている灯だった。
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