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2.廻る歯車
そこにいたのは目を大きく見開いている灯だった。リュックを背負っていて、少しクマができているところを見ると勉強か他の何かで忙しいのか、とにかく疲れているように見えた。
「えっと、珍しいね。こんなところで会うなんて」
明里は作り笑いを浮かべて灯に話しかけた。この間といい、最近よく灯に会うようになったなと考えていると辰巳が声をかけてきた。
「明里ちゃんのお友達?」
「あ、えっと……」
友達よりもお互いのことをよく知っている。けれど、そう宣言するには二年半というブランクが大きいような気がして明里は口ごもってしまう。
「幼なじみの青木灯です。あなたは?」
「へぇ、明里ちゃんの幼なじみか。俺は……明里ちゃんのバイト先の先輩で、辰巳って言います」
辰巳は灯の前に手を差し出した。灯はその手を取り、ふたりは握手をしていたが、明里は二人の間にただならぬ雰囲気を感じ取っていた。
「それから、彼氏候補、かな」
「彼氏……?」
「まだ返事もらってないんだけどね」
「た、辰巳さん!」
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