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「いたっ……」
頭に鈍痛を感じて瞼を開けると、頭上のベッドボードに乗せていたスマホが盛大に明里の頭に当たった。手にとって「今日の予定:バイト」と表示されているのを確認すると、のろのろとベッドから起き上がった。
あのときのことを夢にまで見てしまうなんてなんて寝起きの悪い日なのだろう。
そう思いながら一階に降りると、母親が洗濯物のかごを抱えてベランダに出ようとしていた。
「おはよ、明里。まだ起きてませんって顔」
「起きてるよ……夢見は悪かったけど」
ぼんやりとした意識のまま母親に話しかけると洗面所で顔を洗った。うがいをしてコンタクトレンズを入れる。視界がはっきりしてくると、頭の中もはっきりとしてくる。
自分の顔にクマが浮かんでいるのが見えて、そんなに寝不足だったかと明里は首をかしげた。もしかしたらあんな夢を見たせいで疲れた顔に見えるのかも、と一人納得するとリビングに戻った。
「朝ご飯どうする?」
「ん、自分で作るから大丈夫」
ベランダから入ってくる風がレースのカーテンを揺らした。暖かい日差しでも風が冷たくなってくると冬が近づいているのだと感じた。雲一つない高く青い空を見上げながら、今日は良い一日になりますようにとそう思いながら朝食作りにとりかかるのだった。
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