2.廻る歯車

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「ん、あぁ、そろそろ結婚しようと思って、今日は挨拶に来てもらったんだ」 「そうなんだ、おめでとう!」 ファッション雑誌から出てきたような綺麗な女性に、明里はこんにちはと頭を下げた。するとその女性も挨拶をしてくれて、とても心が晴れやかな気持ちになった。 少し年の離れた光はよく明里の面倒も見てくれた。それこそ料理なんてあまりしたこともなかったのに、お互いの両親がいないときなど二人のためにホットケーキを焼いてくれたことだってあった。 「この子、隣の家の明里ちゃん。弟の灯とずーっと仲良しでさ。昔から結婚するってよく言ってたよな」 「あ……」 そう紹介されると光の彼女は嬉しそうに微笑んだ。彼女からすると、もしかしたら明里は義理の妹になるかもしれない人物、と取られてしまったのかもしれない。それこそ一人っ子の明里からすれば光のような義兄や彼女のような義姉ができたらこんなに嬉しいことはない。でも肝心の灯にそのつもりはないのだから、その日はやってくることはない。そう思うと逆に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
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