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「あ、ごめんね、引き留めちゃって。せっかく実家に戻ってきたのに……」
「全然。っていうか明里ちゃんも上がってく? もう家族みたいなもんだしさ」
「えっと、あ、そうだ。お母さんと買い物行く約束してて。ごめんね」
灯の母親と父親とは顔を合わせれば挨拶をするけれど、灯と距離があることには気づいているはずだ。まさかそんな一家団欒の場に行けるはずもなく、明里はとっさに嘘をついた。嘘と言っても家の中で家事をしている母親を無理矢理連れ出せば本当になるだけの話だ。
「そっか。タイミング悪かったな。じゃあまた時間があるときに灯も入れてメシでも」
「う、うん。光くんも忙しそうだし、そんな無理しなくていいからね」
できるだけ違和感のないように遠回りに遠慮の意を伝える。
「お前らのためならいくらでも時間作るよ。じゃあな。灯のこともよろしく」
「うん、また……」
しかしその意思は伝わってはいなかったようだ。
けれど家に入って灯に会えばきっとわかるだろう。もう二年半もまともに会話すらしていない。お互いが今何に興味を持っているのか、それすらもわからないのだ。
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