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光が結婚するという話はご近所にあっという間に広がった。一軒家に住んでいると周りは昔からの顔なじみが多く、明里たちは近所の人たちに成長を見守られていたと言っても過言ではない。光の他にも近所の誰々さんが結婚するなどの話は次の日には町内に広まっている。
「光くんが結婚ねぇ。もうそろそろ適齢期だものね」
夕食の支度をしながら母親がはぁとため息をついた。会社が集まるエリアには少し遠いこの街では就職のタイミングで家を出る人が多い。大学はまだ通える範囲だが、仕事となると働く場所によっては通勤時間がもったいなくなり、一人暮らしをするパターンになってしまうのだ。
「聞いた話だと結構出張も多いらしくてね。支えてくれる人がいるって良いわよね」
まるでドラマを見ているような母親の言い方に明里は相づちを打った。確かに就職して、一人暮らしをして結婚相手を見つける。理想のパターンかもしれない。
「あ、そうだ。青木さん、その彼女さんの親御さんとの顔合わせで半月ぐらい関西方面に行ってるんだって」
「そうなんだ。旅行もかねてって感じ? いいなぁ」
「それで、灯くん一人だから、あとでご飯持ってってね」
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