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青木の両親だけでなく明里の母親も灯との関係に何かがあったことには気づいているはずだ。けれど今まで何も言わなかったのは優しさなのか。なんとなく母親がチャンスをくれたような気がして、明里は紙袋を持って隣の家に向かうのだった。
青木家の扉の前に立つと緊張しているのが自分でもわかった。親のおつかいで灯のお母さんにものを届けたことだってあったし、そのときも普通に振る舞えたはずだ。でも今この家には灯しかいない。それが緊張を増大させていた。
ピンポーン――。
家のチャイムを鳴らしてみたが出てくる気配はない。リビングの電気はついている。もしかして消し忘れかと思っていると、ふいに扉が開いた。
「はい……って、明里?」
ボサボサの頭で出てきた灯の表情はあの日と同じで疲れきっていた。母親から聞いたゼミで忙しいというのは間違いではないらしい。
「こ、こんばんは。ご両親今いないって聞いて……。お母さんから頼まれて色々持ってきたの」
「そうなんだ、じゃあ上がって」
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