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紙袋を見せると、灯はそれだけ言ってさっさと家の中に戻ってしまった。てっきり紙袋を渡して去るつもりだった明里はどうしようかと立ち尽くしてしまう。
「そこにいたら寒いでしょ。早く入って」
「お、お邪魔します……」
明里がついていかなかったからか、戻ってきた灯に二度もそう言われてしまっては紙袋だけを置いて帰る訳にはいかない。少し迷って明里は青木家に上がった。
リビングに入ると明里の記憶の中に残る懐かしい景色……はどこかへ消え去っていた。
「持ってきてもらって悪いんだけど、食べれる状態にしてもらってもいい? ご飯は冷凍庫にあるから」
「あ、うん、用意するね」
その光景を見てしまっては明里も灯の指示に従うしかなかった。リビングに広がっていたのはたくさんの参考書とレポート用紙だった。ゼミで忙しいと聞いていたのは本当だったのだ。
「今、忙しいの?」
それとなく尋ねてみれば灯はリビングを見てあぁ、とうなずいた。
「親いないから、リビングなら片付けなくて良いかと思って。部屋だと寝るところなくなるし」
「そうなんだ……。すごく頑張ってるんだね」
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