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「灯、残りの分で暖めるものはメモ貼っておいたから」
「……」
「灯?」
リビングの方に戻ってパソコンに向かって作業をしていた灯の姿は見えなかった。おかしいなと思いリビングに行ってみると、ソファに横になって眠っている灯の姿があった。薄らとクマが浮かんでいるのが見えた。
「あんまり頑張り過ぎちゃダメだよ」
優しい灯は昔から頑張り過ぎるところがあった。いわば優しすぎるが故に何でも引き受けてしまうタイプの人間だ。だから学級委員をやらされたり、文化祭の実行委員をやらされたり、みんなが避けるような大変な仕事ばかりを押しつけられてきた。
大学に行ってもそんなことになってるんじゃないかなと思うと明里は灯のことが心配になってしまう。
忙しいところに風邪を引いてしまってはいけないと明里は毛布を取りに行こうと灯の部屋へ向かった。
「懐かしいな……」
いつも遊びに来ていた灯の部屋。今は外側からしか見れなくなってしまったけれど、まさかこんなタイミングで訪れることになるとはと少しだけ胸が痛くなる。たくさん遊んでこの部屋に泊まったことだってあって。それに……。
「って、毛布もって行かなくちゃ……」
まあの日の光景が頭に浮かんできそうになり、明里は慌てて灯のベッドから毛布を剥ぎ取ってリビングに向かった。
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