1.実らなかった初恋

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大学生になってから少しは自立した生活をしようと、バイトの日や、講義が二限からの時は自分で朝ご飯を作るようにしている。とはいえ、朝は支度をしなければいけないしそんなに時間はかけられない。食パンの中身を切り抜いてフライパンに乗せる。穴にバターを落として卵をいれる。そして、ハムと切り抜いた食パンで蓋をする。弱火で五分ほど焼いたらひっくり返して完成。まさに超時短の朝ご飯だ。簡単なのに早くておいしい。こうして大学三年になる今まで生活してきた。 「明里、そろそろ支度しなさいよ」 「はーい!」 食後のヨーグルトを食べていると母親の声が聞こえた。いつもバタバタしながら出て行く明里のことを思ってか母親はたまにこうして気にかけてくれるのだ。歯を磨き、髪の毛を整え、服を着替えてメイクをする。だんだんいつもの自分に仕上がっていくのを見ると少しだけ気分が上がっていく気がした。 「よし、今日も大丈夫」 明里は姿見の前でくるりと回って変なところがないか確認した。可愛いと思ったことはないけれど、鏡の中の自分ににっと笑いかけた。 「それじゃ行ってきま~す」 「晩ご飯は?」 「食べる予定!」
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