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持ってきた毛布をそっと灯にかけると、少しだけ身じろいだ。閉じられていた瞳がゆっくりと開く。
「あ、ごめんね、起こしちゃった? 大変かもしれないけどちゃんと寝た方がいいよ」
「ん……」
ぼんやりとした瞳で灯は現状を理解していないようにも見えた。そういえばあんまり寝起きも良くなかったっけと思い出すと、明里は苦笑した。
「明里、もう帰るの……?」
「うん……」
ぎゅっと腕をつかまれて明里の心臓がドクドクと音を立てる。話すことも久しぶりだったのにその上触れられるなんて思ってもいなかった。突然の出来事にどうしていいかわからずに灯を見つめた。
「また、来てくれる?」
「えっ……」
「また明里と話したい……」
眠い目をこすりながら灯が言葉少なにそう語ったのを聞いて自分の耳を疑った。あの日、「ごめん」と謝られてから距離が離れていったのに、なんで今更と思う気持ちよりも嬉しさの方がこみ上げていることに気づいた。
「また、ご飯持ってくるから」
「うん。ありがとう。今度明里の話、聞かせて」
「私も、灯の話、聞きたいな」
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