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3.すれ違う心
「明里ちゃん、ぼーっとしてるけど、大丈夫?」
「え、あ、すみません。何でもないです。大丈夫ですよ」
辰巳に話しかけられて明里ははっと意識を戻した。目の前にいる辰巳は心配そうな表情を浮かべていて明里は申し訳なくなり作り笑いを浮かべた。
あの夜、灯の家に女の子がいた日。灯からちゃんと話したいと何度もメッセージが来ていた。けれど明里はそのメッセージに返事をすることはなかった。
二度目の「ごめん」は明里の心に深く突き刺さった。それでも勇気を出してもう一度灯の家を訪れてみれば、灯は別の女の子を家に上げていたのだ。
きっと明里のことはとっくのとうに過去になっていたのだ。それを期待していい気になって、灯への思いを諦めきれずに家に上がってしまった自分がいけないのだとわかっている。
だから、今日は辰巳にデートに誘われて、外に出てきたというのに。ふとした時に灯のことを考えてしまって、未練がましい女だなと自嘲した。
「元気なさそうだったから、少しでも元気が出たらなって思ったんだけど……」
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