100人が本棚に入れています
本棚に追加
辰巳と行きたい場所が思いつかない。灯となら公園でも家でもカラオケでもどこでも楽しいのにと考えると、辰巳にも申し訳なくなってきた。
辰巳が寄りたいと言っていた本屋に寄るとそのあとは散歩をしながら帰ることになった。時間もあるから家に送るよと言われ、今日こそちゃんと返事をしなければと明里は重い気持ちのまま歩き出した。
「そういえば就職活動の方はどう?」
「あ、えっと、全然……」
住宅街を歩きながら辰巳に尋ねられて明里は歯切れ悪く答えた。灯のことばっかり考えていて就職ガイダンスに出てもまだまだ就職活動のことなんて考えられなかった。マスコミ関係の仕事に就きたい友人はそういった集まりにも頻繁に出ているようだったが、そこまでのバイタリティは明里にはない。
「まぁまだこれからだし、自分のペースでゆっくりね」
「はい……」
辰巳の優しさには本当にいつも助けられていた。もう来年は就職してしまい気軽に会うことはできなくなってしまう。でも不思議とそれを残念と思うことはなかった。むしろこれからも辰巳の人生を応援したいと言う気持ちの方が大きかった。
最初のコメントを投稿しよう!