1.実らなかった初恋

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リビングから母親に声をかけて玄関に向かうとキャメル色のショートブーツを履いた。今年買ったばかりの新しい靴だ。寒くなってきたこの季節によく合う色だった。 玄関のドアを開けて門を出ると、ちょうど隣の家の玄関のドアが開く音がした。 「あ……」 明里は気にしないようにとなるべく意識を向けないようにしたのに、向こうの方が歩く歩幅が大きくて、門を出たところで鉢合わせてしまった。 「お、おはよ。灯」 「……おはよ」 「今日は学校?」 「うん、まぁ」 「そっか。私はこれからバイトなんだ。良かったら今度遊びに来てね」 「時間ができたらね」 眠そうにあくびをした灯は明里を一瞥すると自転車にまたがった。太陽の光に透けて見えるその柔らかそうなくせっ毛はどこか犬みたいだなぁと思っていると、あっというまに明里の見えないところまで走り去ってしまった。   よりによってあんな夢を見た朝に限って灯に会ってしまうなんてツイてないなぁと思いながら駅に向かって歩き出すのだった。
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