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少しだけ変わったのは高校の時の制服ではなく、私服が掛けられていたり参考書が増えていることだろうか。
「飲み物、紅茶で良かった? あとこれ……」
部屋に戻ってきた灯の手にあったのは暖かい紅茶と保冷剤だった。渡された保冷剤を目に当てるとひんやりとして気持ちが良かった。そんなに泣いた訳ではないのに、まだ熱を持っているのは気持ちが溢れでたせいなのだろうか。
「ありがと。いただきます」
紅茶が好きだと言っていた明里のために、遊びにくるといつも紅茶を入れてくれた。灯はそれをまだ覚えていてくれたのだと思うとそれだけでも嬉しかった。カップに口をつけると暖かい紅茶が体の中に染み渡っていくようで体の力が抜けていくのがわかった。
「落ち着いた?」
「うん。ひんやりして気持ちいい」
目に保冷剤を当てているせいで灯の表情はよくわからなかったけれど、灯も落ち着きを取り戻していることはわかった。灯があんなに激昂したのは初めて見た。多分幼なじみとして心配してくれていたのだろう。それ以外に理由なんてない。
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