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「辰巳先輩に、キスされそうになった」
「っ!」
「でも、ちゃんと拒否したよ。きっと辰巳先輩なりの荒療治みたいなものだったと思うの、だから……」
「やっぱり……」
悔しそうにベッドを殴る灯が何を思っているのか。そんな風に大事にしてもらえるような存在じゃないのに。そういうことをするのはあのとき家にいたあの女の子にするべきものでしょうと明里の胸がツキリと痛む。
「灯が気にすることなんてないよ。私たちただの幼なじみじゃない。それよりも前に家に来てた彼女、さん? 可愛い子だったね」
「あれは……」
「幼なじみだからってこんな簡単に家に上がったら、まずいよね。私、もう帰る……」
「そうじゃなくて!」
立ち上がろうとしたところでまた腕をつかまれた。けれどさっきのように強い力じゃない。
「そうじゃなくて……お願いだから、僕の話を聞いて……」
すがるようなその声に、明里はやっぱり灯のことを放ってはおけない自分に呆れながらも灯の話に耳を傾けた。
「あの子はゼミの後輩で……あの日はちょうと実験レポートのまとめをやってたんだ」
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