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灯から語られたのは灯が何を大学で勉強しているかということだった。灯は生物学のコースを取っていて、ゼミでは植物、とりわけ花についての研究をしているらしい。けれどそう話している灯はずっと指の甘皮をいじっていて、明里はそれが嘘だということがわかった。灯が明里の嘘を見抜けるように、明里も灯が嘘をついているときの癖をよく知っている。
「それだけじゃないよね?」
「……うん」
灯も明里に嘘をついていることがバレていることを観念したように話を続けた。
「その子と、ちょっと良い感じになってた。明里が辰巳さんと付き合うなら、僕も前に進まなきゃって思って……でもダメだった」
「ダメだったって……?」
「しようとしたけどできなかった」
その言葉にあの日の出来事が脳裏によみがえってきた。良いところまでいったのにそれ以上先に進まなかったこと。理由はわからないけれど、明里はその女の子の気持ちを思うと、灯に対して怒りしか浮かんで来なかった。
「灯、最低なことしてるよ。女の子の敵」
「わかってる、よ。最低だよね、ホントに」
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