1.実らなかった初恋

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あの日は灯の家に遊びに行っていて、灯の部屋でテレビゲームをしていた。卒業後はお互いに別々の大学への進学を決めていて、少ししんみりしていたのもあったかもしれない。 『なんか、変な感じだね。来月から別々の大学なんだもんね』 明里はぽつりと不安を漏らした。ずっと同じ学校に通っていたし、家が隣同士だから毎日顔も合わせていた。学校に行けば灯に会えるという支えはもうなくなってしまう。別にお互いに同じ高校に行こうと示し合わせて進学したわけじゃない。たまたま一緒だっただけだ。 それが大学生にもなれば目指してくる道が変わってくる。いつまでも一緒にいられるわけではないのだと、現実を突きつけられたような気がした。 『うん。でも結構楽しみかな。明里はやっぱり不安?』 『自分で選んで決めたことなんだけどね。いつも灯がそばいてくれると思ったから。頑張らなきゃって思ってはいるんだけど……』 ゲームをする手を止めて作り笑いを浮かべた。 本当は不安だった。今さら、灯と同じ学校に行けるわけがないのに漠然とした不安が襲ってくる。
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