100人が本棚に入れています
本棚に追加
否、そう思っていたのは自分だけかもしれない、と今は思う。
あのときは灯も気まぐれだったのだ。だから途中で興がそがれてしまったのかもしれない。
そう思うことでしか明里は平静を保つことができなかった。
それでもあのときの熱は忘れることができない。ふれあった唇も肌も、あんなに気持ちが高揚したことなんてなかった。あれは灯だったからだとわかっているのに。
「なんでこんな風になっちゃったのかなぁ……」
今日、灯に会うのは久しぶりだった。
あんな気まずい別れ方をしたあと、別々の大学に進学したこともあり会う機会が減ってしまったのだ。高校生の頃は家に帰れば会える時間もあったけれど、大学生になればお互いにバイトを始めたり、友達とご飯に行ったりすることも多くなり、家を行き来することもなくなってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!