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しかし昔からそういったものほど、壊したくなる性格だった。
それは幼少期にまで遡る。
大切にしていた車のオモチャを原型がわからないぐらいに破壊したことがある。
身体中の血が震え、感動したものだ。
あのときの感動の再現を求めている。
味わいたくて仕方ないのだ。
だから殺害を繰り返す。
「……聞かせてくださいよ。あなたの詞を」
最後ぐらいは、とつけ足す。
運転手がポエムの披露を催促する。
綾は少し考えてから首を横に振った。
「恥ずかしいですよ。でもそうですね。またの機会があれば、そのときにでも是非」
「〝また〟なんてあなたにはない」
タクシーが止まる。
運転手は口の端を上げながら振り返った。
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