きみに、恋う。

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「あんちゃん、写真撮ろ!」 ばらばらと、自分たちの席から離れて集まって写真を撮ったり、先生と写真を撮ったり。 自分のスマホを片手に、クラスメイトや他クラスの子と写真を撮るために学校を歩き回る。 立ち入り禁止の屋上の手前の踊り階段で授業さぼったこと、美術室の独特の匂い、化学の実験室でフラスコ割っちゃったこと、多目的ホールで部活のみんなでご飯を食べてたこと。 まだ帰りたくない、と、まだ帰ってほしくない、が混ざっている。 教室に戻れば、まだ篠崎は残っていて、篠崎の仲のいいグループがこっちを向いて手招きをした。 「みんなで一緒に撮ろうぜ」 「いいね!とろとろー」 8人で何枚か撮ったあと、流れでツーショットを周りが撮り始めれば、篠崎と視線が絡む。 ぎこちなく近づいて、スマホを差し出した。 手汗が滲んでいるくらい、緊張している。 「……とろ、」 「…おー、とる」 なんでこんなに居心地が悪いんだ、そう思うくらいに心臓がどきまぎ変な音を立てているし、篠崎がいつもより近くにいる距離に苦しくなる。 無言の了承で、誰も映らないように教室の隅っこに二人で移動する。 篠崎の態度もなんだかぎこちなくて、ふたりして視線をそらして、わたしのスマホを持った篠崎が、おい、って私を呼ぶ。 「なんなんだよその顔、最後だぞ」 「…なんか、わらえない、」 「…別に、笑わなくてもいいんじゃね」 「やだよ、…笑いたいもん」
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