きみに、恋う。

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篠崎との写真なんて一枚も持っていない。 修学旅行のときにも、体育祭のときも、文化祭のときも、全部後になって写真がないことに気づいて、「撮ろうよ」の一言が言えたらよかったのにっていつも思っていた。 自分から言えなくて、結局今日まで言えなかった。 それなのに、ちっとも笑えない。 さっきまでカメラを向けても全然笑えたのに、篠崎の前だとやっぱり無理。 これも全部篠崎のせいなのだ。 「…お前、俺の前だと全然笑わないもんな」 「そ、んなことないでしょ」 「お前は、いつも怒ってるよ」 「それは、篠崎のせいじゃん」 「じゃあどうやったら笑ってくれんの?」 わたしたちを映していたスマホが、篠崎の手が、下に降りていく。 カメラのアングルは、わたしたちの教室をひっくり返して映しているだろう。 篠崎がこっちを見ていて、わたしの視線と絡んだ。 15センチ上でわたしを見下ろす篠崎の耳が、ほんの少しだけ、赤い気がした。 「……最後、くらい笑えよ」 「……最後、だもんね」 ハハ、乾いた声で笑って見せれば、くしゃ、って篠崎の表情が歪んだ気がした。 自分たちの言葉で最後を使うのが、これだけ心を痛めるなんて思ってもいなかった。
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