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「か、ん、げ、き……!」
スーパーの袋を三つも下げて、びっしょびしょになりながらもダッシュで帰ってきた母の一言だ。
「違うわ~! やっぱり女の子って違うわ~! 男って絶対家にいたって洗濯物のことなんか気にかかりもしないんだから!」
「いえいえ、おばさん、そんな」
目の中に星が煌めいているような母はあいつをベタ褒めにし、挙げ句、高熱の息子のために買ってきたのだろう高級アイスクリームをあいつにご馳走した。
あぁ、大好きなリッチミルク味が……!
あいつと母は、ガシッとなんだか分かりあっていたし、自分は密かに弟から小突かれた。
「なんだよ~……俺のために看病に来い、とか言って呼びつけたの?」
「馬鹿たれ、するかそんな事!」
しばらくすると雨も上がったので、お大事に、と言ってあいつは帰って行った。
風邪であることを忘れるくらいにバタバタしていたせいなのか、それとも彼女の元気を貰えたのか。 気がつけば、だいぶ体も楽になっていた。
夕立のように、突然に押しかけて来て。 雨上がりの虹のように、ちょっと嬉しいようなそんないい気分を。 あいつはもたらしていった。
ちなみに、母の中のあいつの株が爆上がりしたことは、言うまでもない。
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