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彼は伝染るから帰れ、と言ったけど。 いやいやそれだけで来た訳ではないのだ。
「あのね、もうじき夕立がくると思うよ。 なんか空気がねっと~ってしてるでしょ。 空も暗いし」
そう伝えても、彼はピンときていないようだ。 頭が痛いのは天気のせいか、くらいにしか思ってないな……!
「もう! 洗濯物とかお布団がそのままなの!
おばさん、留守なんでしょ。 ああもう、見るに耐えんわ、ほらどいて、いれちゃうから」
彼の家は玄関側にベランダがある。 自分の部屋から彼の家のほうを見た時、もろに目に入った。 お布団は、フカフカのままのほうがいいに決まってるじゃないですか。
入れ終わって、一息ついたらザアッときた。 地面を叩きつけるようなすごい雨だ。
「あ~……間に合ったぁ、よかったね!」
雷も鳴り出した。 割と近いようだ。
「ぅっわ~……きっつ……」
「……とりあえず、止むまでウチにいとけよ。 伝染ったって知らないけどな」
「馬鹿は風邪ひかないっていうから大丈夫です~」
「その理屈で風邪が防げてるなら、世の中の医者がだいぶ助かっとるわ」
彼が、蒟蒻ゼリーをくれ、と言ったのでカップの蓋のフィルムを剥いてあげた。 自分も一緒に食べる。
「……来てくれて、ありがとな。 助かった」
こちらを見ないで、彼はボソッと呟いた。
お、なんだか役に立てた? えへへー嬉しい。
もーう、ずっと雨が降ってたらいいのに。
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