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「よお、久しぶり」
病室のベッドに横たわる友人に声を掛けると、友人は一瞬驚いた顔をした。しかし次の瞬間破顔した。
「来てくれたのか? わざわざありがとな」
「水くさい事いうなよ。同期だろ」
久しぶりに会った友人は小さくなっていた。しかし俺はあえて普段通りに接した。
「お前が休職したって聞いたから心配して様子見に来てやったんだぞ」
「それはどうもありがとう。だが生憎俺はこの通りピンピンしてるぜ」
そう言って手をバタバタ動かしてみせたが、友人は起き上がる事も、寝返りを打つ事さえも出来なかった。
転勤の多いこの仕事、行く先々で色んなヤツに出会う。だがコイツとはやけに気が合った。同い年って事もあるが、コイツとは性格が似てるし価値観も一緒だった。
「いつ頃仕事復帰出来そうだ?」
「いやあ、しばらくは掛かりそうだ。まあ気長に待っていてくれよ」
「あんまり待たせるなよ」
体は自由に動かないが顔色は良い。仕事をしていた時のコイツはやたら元気で世界中を飛び回っていた。その行動力には親方も一目置いていた。だからコイツが辞表を持って来た時、親方は辞表をビリビリ破き「休職扱いにしておくから必ず戻って来い」と言ったそうだ。
「全く、俺に何にも言わないで休職って、冷てえじゃねえか。ひとことくらい相談してくれたって良かったんじゃねえのか?」
「うん……。相談しようかとも思ったけど、お前も忙しそうだったから言いそびれちまったんだ。ごめんな」
いつも強気だったコイツが素直に謝るなんて、そんな姿を見る日が来るなんて思ってもみなかった。
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