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空の下にて
***
「ありがとうございました」
刑務所の外で、珠奈は、砂原に頭を下げる。
「久々に兄の笑顔が見られました。ボルトの気配が消えて、安心したみたいです」
砂原は笑う。
「お礼を言うなんておかしな話ですね。除霊できても、罪は消えないのに」
「でも、死刑は免れました。夜さんがお払いしてくれましたし、もう兄が、死神に振り回されることはありません」
砂原は微笑む。
「夜さん」
「はい」
「兄に聞きました。夜さんは、弟さんと今も一緒にいらっしゃるんですね」
「珠奈さんには見えないんですね」
「はい。私は霊感が弱いので。悪霊みたいな強いのだとはっきり感じられるみたいですけど」
「そうですか」
珠奈は空を見上げる。
「夕立、上がりましたね」
砂原も空を見上げた。
「綺麗な虹が見えますね」
「夜さんは……除霊師の仕事をもうしないんですか?」
「私が除霊師になると、弟がいつまでも成仏できずに側についてまわりそうので、今回限りです」
「……夜さんは、やっぱり私が最初に思った通りのいい人ですね」
「あなたに一億をたかっているのに?」
「それでもです」
「……今回の報酬はいりません」
「え?」
「……見知らぬ男に、一億なんて払っちゃダメですよ」
珠奈は満面の笑みを溢す。
「……もう見知らぬじゃありません。ありがとう、夜さん」
砂原は空に願っていた。
雨上がりの虹の先で、今後は幸せな未来が取りついて、珠奈と咲哉の二人が幸せになりますようにと。
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